「聴いてもらう」ことを選べる人

掲載日:2018.07.24


人は、仕事や人間関係や悩み事に疲れて、
気持ちが落ち込んだりうつ状態になることは、あります。
そんな時、心療内科やカウンセラーを利用することは大事なことだと思います。

仕事や人間関係や悩み事にとらわれすぎて視野が狭くなって
そこから抜け出せなくなっている自分に気づくためにも、
利害関係のない第3者に話を聴いてもらうことは、むしろ必要なことだと思います。

時には痛みやこわばりや不調などで体が教えてくれているのに、
そんな自分の状態に気づくこともできないほど頑張っている人もいます。

一人で頑張って頑張ってきた人は(かつての私もそうでしたが)、
人に相談するのは「弱いから」であって、
「自分は弱くはないから必要ない」と思いがちです。

「自分で何とかできる」と、更に頑張り続け、そうして心身を壊していく人が多いように感じます。
私もかつて、そうやって心身を壊しました。

その一方で、心療内科や精神科、そしてカウンセリングなどを利用してみたけれど、
「聴いてもらった気がしなかった」「かえって傷ついた」「時間とお金を無駄にした気がする」
という人とも出会うことがあります。

そういう言葉を聞くと、同業者として
(なんて言うと、お医者様には「同列にするな」と叱られるかもしれませんが)
「申し訳なかった」という気持ちになります。

そして私自分も、かつて「この先どう生きていっていいか途方に暮れた時」に、
「一時誰かに支えてもらいたい」と、心療内科やカウンセリングを利用した時に、
そういうところが「支えにならなかった」体験をしています。

その時には、「心の専門家でも私を助けられないんだ」と、更に絶望感に打ちのめされました。
最後の「頼みの綱」と思って受けた診療やカウンセリングが自分の助けにはならないと知った時、
奈落の底に突き落とされるような絶望感と恐ろしさを体験しました。

私が今こうして「聴くことを通して人をサポートする」ことを仕事にしている理由の一つは、
「あの時に助けてもらえなかった私(のような人)に少しでも助けになりたい」と思うからです。

ですから、「やっと聴いてもらえる人に出会えた」「これからの人生に希望を感じることができる」
などと言ってもらえると、この道を探求してきてよかった、と本当にうれしく思います。
そして、これからも「もっともっと自分を磨いていこう」という気持ちを強く持ちます。

私のクライアントさんと話していると、例外なくみなさん優秀な人たちだと感じます。
(出会った当初はそういう自己認識が無いクライアントさんが大半ですが。)

一時的に心が凹んでいたりうつ状態になっている人や、あるいは長年生きづらさを抱えている人、
自分らしく納得のいく人生を歩みたい人、可能性を広げたい人、質の良い仕事を続けていきたい人、
など、事情はいろいろですが、みなさん「人に聴いてもらう」ことの持つ意味を理解していて、
「自分を助けたり高めたりするためにお金を使う」意義を知っている人たちです。

先日、1年余りのセッションを終了したクライアントさんからメールをいただきました。
ご本人の許可を得て、ここに一部を抜粋させていただきます。

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セッションを始めて丸一年、自分と向き合って向き合って向き合い続けた一年でした。
どうしようもなく辛い時期もありましたが、紀代子さんの励ましと、
自分と向き合った先に発見できる新しい自分に出会うのが嬉しくて、今日まで続けてこれました。
(中略)
もう一つ今実感していることは、なんでもない日常が本当に幸せなんだということです。
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こんな彼女には、今、目の前に次の試練が立ちはだかっています。
私でもめまいがしそうな試練です。
でも彼女は、≪この問題に直面し、一年前とは全く違う自分がいることを実感しています。
これは、そんな自分に訪れた最初の試練だと思い、もっと成長できるチャンスと捉えて、
前向きに真摯に向き合いたいと思います。≫
とメールで知らせてくれました。

彼女の文面からは、内側からあふれてくる静かな「強さ」と「自信」を感じます。
これは、「強がり」とか「自信のあるふり」などとは全く異なる、「本物」です。
これは、彼女が1年間で自分で手に入れた「自分」と「未来」です。
私の娘とそう年が違わない彼女の、ここまでの頑張りとこれからの人生を思うと、
私は胸が熱くそして温かくなります。

30代の彼女は、1年あまりでセッションを終了しましたが、
40代50代であれば、これまでの思い癖や自己認識、
そしてコミュニケーションの癖などを変えていくためには、
更に時間を必要とすることもあります。

「自分と向き合う」ということは、時に厳しいと感じることもあります。
ですからセッションを受け続けるということは、その厳しさから逃げない強さと、
そこから気づきを得て人生を豊かにしていく賢明さを備えた人
にしかできないことだと私は思っています。

そのような意味では、「カウンセリングを受けるなんて心の弱い人のすること」と思っている人の方が、
実は「自分と向き合う」ことを無意識に恐れている「勇気のない人」なのではないかと思うことがあります。

いずれにしても、毎回のセッションでクライアントさんが変化していく姿を感じることが、
私の大きな喜びであり、やりがいです。
極力「嫌なことはやらない」生活を実践している私ですが、
自分のスキルアップのため、自分を磨くためには、
他人から見ると過酷な修行(?)も苦になりません。

これからも、その人が「本来歩むはずのステキな人生」を取り戻すために
少しでもお役に立てるように精進していきたいと思っています。