ホームページを作ってみたい

掲載日:2023.12.19


クライアントのAさんは2か月前からウェブデザイナーの勉強を始め、
スクールに通い始めています。

そのAさんから「卒業制作で紀代子さんのホームページを作ってみたい」
と申し出がありました。

私はAさんのその言葉と気持ちが、とても嬉しかったです。

それでもちょっと「いっぱいいっぱい」になってしまい、
先日「2か月休校する」ことを決めました。

「休む」という選択をできるようになったAさんに拍手をしたい気持ちです。

まだまだ「休む」ことに対する罪悪感や
「休む」ことを選択した行為に対して責める自分もいます。

それでも「休む」ことを決めたAさんに拍手です。

Aさんのセッションは、ちょうど去年の今頃から始まりました。
当時はコロナ後遺症とも相まって(私から見ると仕事も限界でした)
お仕事を休職中でした。

座位を取ることもできず、ベッドに横たわった状態でセッションを受け始めました。
エネルギーがほぼ無くて、声に力もない状態でした。
45分もたなくて、セッションを30分で終了することもありました。

そんな状態でも仕事を休むことへの罪悪感が強く、
ましてや辞めることなど受け入れられないAさんに
少しずつご自分の状況を理解してもらい、
仕事を辞めることを促してきました。

そんなAさんに私が驚いたのは、セッションの受け方でした。
最初はみなさんがうまくできない「自分の内側に意識を向ける」ということを
Aさんは最初から上手にできました。

私が言葉をかけると、それに従ってAさんは静かに内側に意識を向けていきます。
私がホールドする中で、10分ほど静寂の時間が流れます。
その間にAさんからは、はらはらと静かに涙がこぼれ続けます。

セラピーで癒すところは言葉を超えた部分なので、
静かに内側で感じ、何の涙かわからずとも流れるままにすることが
一番の癒しの状態と言えます。

Aさんのセッションは、私からの言葉を受けて自分の内側を感じ、
45分のうちトータルで30分以上は言葉なく静かに涙が流れるようなものでした。

毎週そのようなセッションを経て、やがて
セッションの後には心身が楽になっていることに気づくようになりました。

2月には仕事を辞め、
5月には体を起こしてセッションを受けられるようになりました。

最初は体調不良のため存在さえ疎ましいと感じていた二人の子どものことも
(自分の心身の状態が最悪では、自分以外の人の世話はできないのは当然です)
少しずつ向き合えるようになってきました。

やがて少しずつ外に出られるようになり、
子どもたちの行事にも参加できるようになり、
9月には「やってみたい」と思う仕事の勉強を「やってみよう」という気持ちになり、
10月にはスクールに入りネットとリアルで勉強を始め、
そして「今に至る」ということです。

1年前には横たわった状態でしかセッションを受けられなかったAさんが、
1年後の今、「やってみたい」道を少しずつ歩み始めたことを
私は本当に嬉しく感じています。

Aさんのこの1年間の変化を通して改めて思うことは、
理屈(言葉)を超えて体の感覚や本当の気持ちを感じることが、
深い痛みの回復には一番効果があり近道だということです。

これを読んで「自分はAさんと比べてダメだな」と思う人が出てくることを
私は少し気にかけています。

いつも言いますが、人と比べないでください。

言えることは「深く自分を感じることができるほど回復は早い」ということです。
でも、最初はそれがどういうことかよくわからない人が大半です。
少しずつわかってきます。

「自分を深く感じる」というセッションの受け方の理解も回復のペースも、
それぞれの人のタイミングとペースがあります。

どうか焦らず自分を信じてあげてください。
「良い方向に生きていきたい」という自分の気持ちを信じてあげてください。

まだまだAさんには母親や祖母との関係で傷ついた深い痛みが残っています。
時々その痛みが吹きあがってくることがあります。
癒す必要があることについてはその都度しっかりと感じ切っていくセッションを続けていきます。

そして、Aさんに限らず、私のセッションでは
深い痛みを癒すことと同じくらい、
その人が本来持っているエネルギーに気づき
自分を活かす人生を歩むことも大事にしています。

子どもの頃に親に踏みつけられてしまった瀕死の種を生き返らせて、
本来のその人らしい花を咲かせる喜びを味わってもらう、
そんなお手伝いができることは私の大きな喜びです。

Aさんは専門職として働いていた以前の職種に戻るのではなく、
「やってみたい」と思った仕事に向けて歩み始めています。

常識的に考えれば、国家資格を持っているのですから、
身分の安定としても収入としても以前の職種で就職したほうが良いように思えます。

しかし私のセッションはそちらの道をお勧めしません。
もちろんAさんが「やりたい」と思うならいいのです。
しかし「やりたい」気持ちがないのに「損得」で選んでは、人生はうまくいきません。

「ウェブデザイナー」がドンピシャにAさんの本当にやりたいことかどうかはわかりません。
でも「やってみたい」に一歩踏み出してみることで、次の景色が見えてくることは確実です。
こうやって少しずつ「自分が本当にやりたいこと」に近づいていくのです。

実は私には「プチ夢」があります。
それは、すでにウェブデザイナーとして10年の実績があるMさんと、
IT企業の管理職として長年の実績があるNさんの二人にコラボしてもらい、
「いつか私のホームページを作ってもらう」という夢です。

お二人には言っていなくて、私が勝手に思い描いている妄想です。
「私のクライアント経験者が作ってくれるホームページ」って、
ステキなものになる気がしています。

そこへ一足先にAさんが手をあげてくれたのです。
Aさんが自分のペースで歩みながら作ってくれるホームページを楽しみにしています。

そして、私の夢がさらに膨らみました。
「接点の無かった3人のクライアントさんたちが
協働で私のホームページを作ってくれる夢」です。

相も変わらず毒を吐いてくる母親に動じることは無くなり
自分らしく軽やかに仕事に家族に幸せを見出しているNさんと、
来年はきっと今の混乱から抜け出しさわやかな空気が吸えるようになるMさんと、
ルーキーのAさん、その3人が私のホームページの構想を練っている。

合間に「どれだけ自分の親がひどかったか」の「毒親自慢比べ」をしながら、
笑いながら楽しく3人で私のホームページを作っていく。

妄想していると幸せ感に包まれて体がホカホカしてしてきます。

本人たちの了承を得てはいませんが、
私が勝手に思い描いている夢です。

今年最後のコラムとなりました。
みなさんが良い年末年始を過ごされることを祈っています。