職業を聞かれると…
掲載日:2020.08.18
時々「お仕事は何ですか?」と聞かれることがあります。
そんな時いつも、少し困ります。
カウンセラー? セラピスト? メンタルコーチ?
どれもそうとも言えるけど、どれもピッタリこない。
なんとなく違和感。
その人の「より良い人生を願って」、人間としての「自分を全部使って」、
ご縁が繋がった人に「誠意を込めて関わる」。
カウンセラーもセラピストもコーチも、そうだと言えばそうかもしれないけど、どこか仕事。
もちろんお金をいただいているのだから仕事なんだけれど、
私のやっていることはもう少し人間臭い感じ。
自分の知識や技術のみならず、これまで生きてきた人生の経験、
今の私のナマの生き方、ひらめき、
そんなものをクライアントさんに最適なタイミングで差し出す。
するとクライアントさんは、そこから何かに気づいたり
刺激されたり気持ちが揺さぶられたりする。
今までずっと強く抱えてきた「不安感」や「生きづらさ」が
軽くなったり癒されたり手放すことができるようになっていく。
あるいは、「自分はこれでいいんだ!」「こう生きていくんだ」と確信が生まれたりする。
「そこを目指していきたい」と在りたい姿が明確になったりもする。
とにかく、クライアントさんにいろんなことが起きる。
それははっきりと意識されることも、無意識な部分に変化が生まれることもある。
そこに、私と関わる意味が生まれる。
だから、単に言葉だけでのカウンセリングやセラピーや
コーチングの枠組みを越えるやり方をする時もある。
「こんな関わりがあると、この人にとって良い刺激や気づきが生まれそう」と思ったら、
私はどんなことでも提案してみる。
めったにはないけれど、
ご本人さえよければ、私の住む町まで来てもらって一緒にランチをすることもある。
牧場のイタリアンでランチをして、緑の中で子牛とたわむれる。
そのあと別の牧場で私のイチオシのソフトクリームを一緒に食べたり、
時間が許せば滝までドライブして水の音や匂いを感じる。
いつもではないけれど、「この人に今こんなことがあったらいいな」と思ったら、
私は「相談」の枠を越えてしまう。
先日は、「最近テニススクールに入った」というクライアントさんに、
「私も若いころにテニスをしていたことがある」という話をしたところ、
それで盛り上がり、ついには「いつか一緒にテニスをしましょう」という話になった。
いつになるかわからない、そんな「いつか」であっても、
本気でその約束をしたとたん、
長いあいだ彼女の心を覆っていた鉛色の重たい雲の隙間から
ほんの少しだけれど青空が見えて太陽の光が差し込んだように私には感じられた。
人の心が晴れたり癒されたり解放されるのに役立つことは、
「相談」という枠の中で言葉を交わし合うだけにとどまらない。
そんな「枠越え」で今私が一番ワクワクドキドキしていることの一つは、
ピアノを習っているクライアントさんとの約束。
発表会で「クライアントさんのピアノ伴奏で私が歌う」という約束。
その約束をしたとたんに、ご本人は気づいているかわからないけれど、
クライアントさんの中の何かが大きく変化した。
「一緒に何かをする」と約束をする。
すると、そこに明るい未来があると感じられる。
そんなことで、クライアントさんの心が晴れやかになったり
心の扉が開いたりすることは、実はけっこうある。
私自身は、「心の扉を開けよう」と意識しているわけではない。
おしゃべりをしている中で、私が「こうしたいな」と感じたことを言ってみる。
あるいは、クライアントさんのほうから「こうしたい」が生まれることもある。
それは意図されたことではなく、本当につながり合った二人の間に
そっと置かれる神様からのちょっとしたプレゼントのようなもの。
だから、私のしていることは「カウンセリング」でも「セラピー」でも「コーチング」でも
しっくりこなくて、一応私は「セッション」と言っている。
でも、「セッション」は職業ではないので、職業を聞かれた時にはやはり少し困る。
クライアントさんのテーマは、それぞれ違う。
・親の支配や毒親の悩み
・職場の環境につぶされず、良い仕事を誇りを持ってやり続けていく
・人と違う(発達障害やLGBTXなど)
・虐待やいじめの影響による生きづらさ
・なぜかわからないけれど、ずっと抱えている不安感や深い孤独感
・事件や事故などによるPTSDの苦しみ
・親からの依頼による子どもの問題(摂食障害・抜毛・自傷行為等)
・余命宣告を受けた後の生き方や、難病との向き合い方
などなど多岐にわたる。
でも、どんな悩みやテーマであっても、
私の関わり方は、「人間:浜田紀代子」として誠実に向き合うことに変わりはない。
あとは、その都度クライアントさんの今とダンスを踊るように、
瞬間瞬間クライアントさんを感じながら最適なステップを踏むという感じ。
だからクライアントさんによっては、「ただおしゃべりをしただけで終わった」と感じる時もある。
実は、その「おしゃべり」の中に、私は大事な物をそっと置く。
クライアントさんがそのことに気づくのは、セッションが終わった直後かもしれないし、
数日後かもしれないし、数か月後かも、それとも気づかないで終わることもあるかもしれない。
それでも、ご本人が意識できるかできないかに関係なく、
必要な変化は起きているので大丈夫。
一人一人違うクライアントさんと、「一人の人間同士」として関わる。
お互いにそこに誠実であれば、その人にとって必要なことは生まれてくる。
私はそれを自分の感覚や知識や時には体で感じながら、クライアントさんに差し出す。
私のしていることは、そんなこと。
これをひと言で何と言えばいいのか、今はまだわからない。
私の職業、良いネーミングがあったら、教えてください。