「素晴らしい若者たち」に勇気づけられて

掲載日:2021.10.26


ショパンコンクールが先週半ばに終わりました。
結果発表が行われ、ニュースでも「日本人二人が入賞した!」と報じられたので、
ご存知の方も多いと思います。

この一か月近くほぼ毎日素晴らしい演奏をYouTubeで聴いていた私は、
その余韻がまだ残っています。

最終的に、ファイナルには日本人二人(反田恭平さん、小林愛実さん)を含む12人が残り、
最後の演奏はソロではなくオーケストラと共に「ピアノ協奏曲」に挑みました。

音楽やピアノに詳しい人たちにとっては当たり前のことも、
楽譜も読めない私にとっては新鮮で、コンクールの仕組み一つとっても
「そうなんだ」と感心したり純粋に楽しんだりした時間でした。

結果は、1位はカナダのブルース・シャオユー・リューさん(24歳)でした。
私のイチオシの反田恭平さんは、惜しくも2位でした。
でもこれは、50年ぶりの日本人で歴代最高タイ記録だそうです。

1日に4人の演奏を3日間行うファイナルで、
1日目の奏者だった反田さんの演奏を聴いて、
私は「反田さんが1位になる」と思いました。
そのくらい素晴らしい感動的な演奏でした。

ところが3日目の、順番が最後だったブルースさんの演奏を聞いた時に、
反田さんの時とはまた違ったものすごい感動に見舞われました。

思えば、最初から結果は私にとってほとんどどうでもよくて、
ただただ若き才能の努力の結晶の場にいさせてもらえる喜びに感謝するばかりでした。

何の知識も無い、むしろ無いからこそ、純粋に演奏を味わえたのかもしれません。

一粒ひと粒の音のキメが細かくて、その滑らかなつながりが体の中にすっと入ってくる。
上位入賞者の演奏には、そのように感じることが多かった気がします。

演奏の途中で、「ピアノが歌っている」と感じた瞬間がありました。
ピアノは歌うんですね。
それに気づいた時、本当に感動しました。

心臓がドキドキしたり、体の奥の方が震えたり、涙が出たり、
時には自分の中の澱(おり)のようなものが浄化されていくような感覚があったり、
時には心臓をつかまれるような感覚に見舞われたり・・・。

演奏が終わった時には、余韻が体中に広がります。

ファイナリスト12人の中には、私が「この人の演奏、好きだな」と感じた
中国の青年ハオラオさんもいました。
今回、入賞は逃しましたが、なんと彼は17歳だそうです。

年齢的にはあと2回もショパンコンクールにエントリーできます。
5年後の彼は、どんな演奏をしているだろうか。
そう思うと、あと5年は生きて彼の成長を見たいと思いました。
私にとっては、甥っ子の成長を楽しみにしているような、そんな感覚です。

ファイナルの結果発表を待つ間に、ファイナリストが一堂に会して
おしゃべりをしている動画も配信されました。

みんな全力を尽くし終わった解放感に包まれているようで、
無邪気に笑い合う姿はやはり10代20代の若者たちでした。
私服のハオラオさんは、その辺でバスケでもしているような少年に見えました。

英語があまり得意そうではないハオラオさんのために、
ブルースさん(彼は中国系カナダ人のようです)が通訳をしてあげる姿も微笑ましかったです。

演奏中は20代とは思えない風格のガジェヴさん(イタリア・スロベニア)は、
実は「天然さん」だということがわかりましたし、
スペインのガルシアさんは、素でもやっぱり個性的でお茶目な青年でした。

純粋に全力を尽くし戦い終えた若者たちがじゃれあって無邪気に笑い合っている姿には、
こちらの気持ちもほっこりし、また別な感動さえありました。

そこには国籍も人種も、おかしな大人たちの思惑も無く、
ただ自分の目指すものに向けて力を尽くした若者たちの美しさがあった気がします。

ステキな若者たちにおおいに刺激を受けて、
私自身は、今1週間の海外トレーニングの真っ最中です。

例によって今回もオンラインでの実施です。
時差の関係で、朝から昼までと、夜の時間帯でのトレーニングです。

「このトシでよく頑張っているな、私」と思っていましたが、
若き才能たちの精魂込めた演奏を聞かせてもらい、とても刺激を受け、
「私も頑張ろう!」と、更に前に進んでいく背中を押してもらっている気がします。

今回のトレーニングで扱っているのは、胎児期・周産期トラウマや
事件・事故など大きな衝撃によるトラウマの治療についてです。

学ぶ方の神経系にも刺激や衝撃が起こる場合もあります。
だからこそ私たちセラピストは、自分自身の神経系を含めた心身の状態を
常に良い状態に保っておくことが大事なのだと改めて思います。

逃れることのできない大きな衝撃を受けた体験によって、
その後の人生を生きる上で大きな困難を抱えてしまった人たちが、
その心身の健康を取り戻し、生きづらさを手放し、
自己肯定感を取り戻すために、
日本中から集まった熱い思いを持ったセラピストたちが学びを深めています。

私自身も、若きピアニストたちからエネルギーをもらい、
彼らの今後の活躍を心から祈ると共に、
クライアントさんたちのために覚悟を持って研鑽を積んでいきます。