薄紙1枚の積み重ね

掲載日:2015.07.15


 最近のセッションの中で、数年間コーチングを受けているクライアントさんたちの変化を実感する機会がいくつかありました。『続ける』ことの意味の大きさに、私自身が驚き感動しています。
 30年あるいは40年50年という年月の間に培われ無意識に続けてきた『物事の捉え方』や『思い癖』『反応の仕方』などは、いくら本人が変えようとしてもそう簡単には変わりません。以前は自分のために役立っていたかもしれないそれらの反応が、今は却って自分自身を縛ったり苦しめたり息苦しさを感じさせると頭ではわかっていても(セッションを受ける前にはそれさえ気づかないことが多いのですが)容易に変えることはできません。毎回のセッションで自分の反応を見直し気づき 時にほんの少し変えていく、まるで薄い紙を一枚ずつ重ねていくような作業です。しかし数年間という積み重ねはとても大きな、実感できるほどの変化になります。
 以前はあんなに苦しんでいた出来事と同じようなことが起きた時に、今 クライアントさんたちは時に軽やかに受け止め、時に上手に手放すことができています。以前は自ら辛さを引き寄せるような癖があった方も、「これは私には要らない」とスルーできるようになった人もいます。いじめの巣窟のような職場の人間関係を、今では軽やかに身をかわし逆にプラスの存在感と影響力を増している人もいます。人は賢くて強くて素敵な存在なのだと一人ひとりが私に教えてくれます。
 良い本を読んだり素晴らしい講演を聞いたりして、その時何かを感じることも大切なことです。でも、その時感じた『思い』が続くことは難しいのも現実ではないでしょうか。時間が経てば、どんなに感動的な気持ちも残念ながら薄まっていくことが多いように感じます。特に「自分を変えよう」とすることは本来居心地の良くないことですから(自分にとって変化したほうが良いとわかっていても、人の無意識は現状維持を堅持しようとします)、よほど意志が強い人であってもなかなか難しいことです。 
 でも、たとえ目に見えるような変化ではなくても薄い紙を一枚一枚重ねていくようなセッションの中で、人は確実に変化することができます。まさに『継続は力なり』です。辛さや苦しみから抜け出し、本来の自分の持つ強さや賢明さや素晴らしさに気づきそこから生き始めているクライアントさんたちと話す時間は、私にとっても幸せな時間です。自分をあきらめずここまで頑張ってきた一人ひとりを愛おしいと感じます。時々「自分は強いからそういうセッションは必要ない」という方に出会いますが、どのような人であっても自分の偽らざる気持ち(時には自分でも気づいていなかった思い)を聴いてもらえる『人』と『時間』を持つことは貴重なことだと私は思います。私のクライアントさんは弱いのではなく、自分と向き合う勇気と賢さがあり自分の可能性を更に広げている人たちだと私はいつも感じています。ただし、自分と向き合うというある意味しんどい行為に繋がるには、人生における苦難や行き詰まり感などに直面したことがきっかけになることはあると思います。

 という訳で(どういう訳?)、新たなセミナーをしようと思います。コーチングを受けていなくても、3ヶ月に1回ほどのセミナー参加によってみなさんが変化していく様子を感じます。それは参加者同士でも感じ合っているようです。私との1対1のセッションで味わう変化や成長の喜びと同時に、参加者として仲間同士の関係になる中でお互いの変化を喜び合う体験もとても大切だと感じています。それに味をしめて、形を新たにセミナーをすることにしました。次回からのセミナーは『読書会プラスα』という形にします。3ヶ月に1回程度の頻度で行う予定です。詳細は≪セミナー欄≫をご覧ください。
 と、ここまで書いて、前回までのセミナー参加者の1人からうれしい報告がありました。セミナーが親子関係の修復に役立ったそうです。わだかまりがあった子どもさんと久しぶりに会った時に、対話がとてもスムーズにいったとのことでした。更に、参加者の一人が子どもさんの年齢に近かったので、その人の言葉からも気づきがあり我が子の気持ちに寄り添うことができたそうです。セミナーの内容が頭にではなく心に届いていたために、ムリをすることもなく自然な形で対話ができてとても良い時間を二人で過ごすことができたと本当に幸せそうに報告してくれました。
 『知識として頭で学ぶというよりは自然に心に留まる内容』で『幸せが増すように日常生活に活かせること』そして『参加者同士で学び合えること』、それが私がセミナーで常に目指していることです。今回はそれが実現できたナマ報告をもらって、とてもうれしかったです。そしてそれができちゃうその人がやっぱりすごいな~と感じました。益々次回に向けてやる気になっている私です。(^_^)