身体が記憶していること
掲載日:2021.11.09
前回お伝えしたように、10月最後の週はオンラインでの海外研修でした。
講師と真逆の時差のため、朝8時から昼までと
18時からの夜の部と、2つに区切っての時間割でした。
講義中に関東地方で地震があり、関東圏の人たちに少し動揺が走ったり、
天候の影響で講師の住む地域一帯が大規模停電になり、
配信可能な場所まで移動するため講義時間が変更になったり、
30日は太陽フレアの影響か、講師の画面が何度も固まったりと、
いくつかのトラブルはありましたが、それなりに研修は終了することができました。
今回は胎児期・周産期トラウマ、そして事件・事故、落下や転倒などによる高衝撃トラウマ、
窒息や溺水など呼吸にまつわるトラウマなどを扱いました。
当初、私は自分のクライアントさんにはあまり関係のないことのように感じていて、
3年間のプログラムのうちの中級の課題として「一応聞いておくか」程度の気持ちでした。
今回のテーマは「高衝撃によるトラウマ」、
つまり「一度に大きな衝撃を受けたことによるトラウマ」への対処であり、
私のクライアントさんの多くは「発達性トラウマ」、
つまり「時間をかけて徐々に心が傷つけられていくことによるトラウマ」を抱えているので、
「トラウマ治療」と言っても、かなりアプローチが異なります。
それでも、学んでおくことは自分のアプローチの幅が広がることであり、
いつどんなクライアントさんの役に立つかわからないので、
手を抜かず気を抜かず学んでいこうとは思っていました。
研修は、午前は講義とデモセッション、夜はそれを踏まえて
上級者のサポートの下で受講者が3人一組でセッションの練習をします。
受講者はまだ「ひよこ」なので、大きなトラウマを扱うことは禁じられています。
小さな、「転んだ」程度の自分の体験をテーマとして扱います。
そして私は、その実習中に、意識にはのぼっていなかったある体験が
今の自分に影響を与えていることに気がつきました。
ひとつは、「大きなストレスを受けると左上半身に痛みやこわばりが生じる」という
私の身体の傾向の原因がわかりました。
受講者とは言え、みんなそれなりに社会で経験を積んできた選抜された人たちです。
そんな受講者同士の実習なので、その過程でかなり深い気づきや変化が生まれます。
実習でセッションを受けた時に、私は意識からはすっかり抜け落ちていた体験を思い出しました。
小学生の時にスキー場で、初心者の男性に激突された体験でした。
よみがえった「意識としての記憶」は、鎖骨骨折をして救急車で運ばれたこと、
痛かったけれど「救急車に乗れる!」「みんなが見ている」ことにちょっとワクワクしたこと、
そんなことを思い出しました。
そして「頭の意識」以外に、「身体が覚えていたこと」が、
その「衝突された体験」でした。
実習では、「大きなストレスを受けると左上半身に痛みやこわばりが生じる」という
私の身体の傾向の原因がそこにあるということがわかりました。
理由がわかったということは、対処できるということです。
このあとは、衝撃トラウマを扱う資格を持った人から個人セッションを受けて、
左上半身に刻まれているトラウマと向き合っていこうと思います。
そして、もうひとつ、実習を通じて、記憶の底に沈んでいた体験を思い出しました。
私は普段、意識しないと呼吸が浅いのです。
また、テレビなどで海や川の水面の下と上(空の方)の両方が見える画像、
つまり「目の前で水面がパチャパチャとしている様子」が映されると、
胸が苦しくなっていました。
顔を洗うことにも少し抵抗感があります。
その反応は私にとっていつものことなのであまり気にしたことはありませんでしたが、
その原因が、小学校に上がる前の幼い頃、海でおぼれかけた体験にあったことに気づきました。
こちらも正式に個人セッションを受けてみようと思っています。
今回の研修の体験を通して気づいたことは、
私たちは、たとえ意識で記憶していないことであっても、
というよりむしろ意識の領域からこぼれ落ちてしまったけれど体には残っている記憶によって、
かなり今の人生が影響を受けているものだということです。
「忘れているんだから無理にほじくりだすことはないじゃないか」と思う人もいるかもしれませんが、
頭では忘れていても身体には記憶されているため、
似たような状況になった時に私たちは自分の意志とは関係なく反応してしまうのです。
それが良い反応ならいいけれど、あまり好ましくない反応なら、
身体の記憶にアクセスして今の自分には必要ない古い反応を解放してあげられたら、
人生は、日常は、もっと快適にスムーズに進むのだと思います。
改めて、身体が抱えている体験の記憶の影響力に感心します。
今回の研修はいくつかの面でハードでしたが、
学びを深めていくことの意味は大きかったと感じています。
仕事(セッション)も好きですが、学びを深めていくことも、
大変だけど興味深く楽しいなと感じています。
これからもクライアントさんへのセッションを通して
「もう必要のない『体に刻まれた反応』を手放し、人生が上向きになる」お手伝いをし、
そして学びを通じて更に「自分をバージョンアップ」していきたいと思っています。