学びから手に入れていること

掲載日:2021.04.13


前回、「海外講師や翻訳本などを通して
欲しい情報に気軽にアクセスできるなんて、ワクワクします」と書きました。

そう書いてから、私の中でちょっとした違和感を感じました。

当たり前に思っていた「使い慣れている言葉」で言ってみた時、
何か違和感というか、それではフィットしない感覚に気づくことがあります。

それは、私がセッションの中でクライアントさんに対してよく求めることです。
「言葉にしてみて、どうですか?」
「それは、今の気持ちや感覚にフィットしていますか?」

そうやって、「こういう時にはこんなふうに感じるだろう」と思い込んでいることの
もっと奥にあるその人の本当の気持ちや感覚に気づいていってもらいます。

いつもクライアントさんに、そんなふうに気づきを深めていくことを促しているので、
自分に対しても「本当にその感覚で合ってる?」と無意識に確認していたようです。

そして今回、新しい情報に触れる機会を得て「ワクワクしている」かと言うと
「ちょっと違うな」と気づきました。

まずは、講師や翻訳本から「新しい情報がたくさん私の中に流れ込んでくるような感じか」と言うと、
「自分になかったものがたくさん入ってくる」というよりは、
「すでに自分の中にあったものが、その情報と響き合う」という方が正確であるということに気づきました。

「自分の内側にあって、なんとなくわかっていたこと」
それが「これでしょ!」と名前を付けられたり定義されたりする感覚です。

これまでの体験経験から自分自身でつかみ取ってきた
まだ名前がついていない感覚や方法が定義され、
自分の内側で「やっぱりそれでいいんだ!」と納得する感覚に近いです。

今回「ワクワクする」という言葉を使って安易に表現したものは、
「自分の内側がじゅわーっと喜ぶ感覚」と言った方がフィットします。

これまでクライアントさんとのやり取りを通して、
私の中で「これって、こうだよね」とか「こうしたほうが、きっといいね」
などと感じて実際にやってきたことに「正しいという根拠」を示され、
それがとても嬉しいという感じです。

自分の中にすでにあったことなら、じゃあその情報はあまり意味がなかったのかと言うと、
そんなことは全然なくて、その情報に触れられたことで、
これまで以上に確信を持ってクライアントさんに向き合っていくことができます。

例えば、とても大きな傷つき体験を抱えている人に、
私は非常に慎重にセッションをしていきます。
亀の歩みのようにゆっくりゆっくりです。

クライアントさんによっては新たな気づきが起きた時に
「早く次に行きたい」と気持ちがはやることはよくあります。

私の中でも「早く、この苦しみから解放してあげたい」という気持ちは当然あります。
でも、そんな時ほど、私は慎重になります。
私の中で「急いではいけない」というセンサーが発動します。

クライアントさんはもちろん「早く!」と思うし、
私も「早くしてあげたい」と思いますが、
私の感覚は「スローダウン」を伝えてきます。

そんな時、私は自分の感覚の方を採用します。
「クライアントさんのために、そのほうがいいのだ」という感覚はありますが、
確信には至らず、「本当にこれでいいのだろうか」と内側では揺れていました。

でも今回多くの学びの中で「そのような状況の時には、それでいいのだ」
むしろ「そうでなければいけないのだ」と確信でき、
その確信は私を大きく勇気づけてくれます。

「有意義なことを何もせず、ただおしゃべりをしているだけ」のような時間の中に、
実は「クライアントさんの深いところに働きかけている」ことを、
これからも確信を持ってやっていくことができます。

「自分にとって全く新しい情報が入ってくる」よりも、
「自分の中に確信が生まれる」ことのほうが、大きな意味があると感じます。

そうは言っても、私にとって新しい情報は全くなかったのかと言うと、それも違います。
「全く新しい情報」というものは確かに少なかったですが、
その分「貴重な情報」を得ることができました。

例えば、とても辛い体験を思い出し言葉にしている時、突然
「何も考えられなくなる」「感覚が切り離されてしまう」「頭が真っ白になる」「凍り付く」など
現れ方は微妙に違いますが、クライアントさんによっては解離してしまうことがあります。

辛い体験を思い出した時に、感覚を遮断してしまうことは、十分に理解できます。

しかし、「嬉しいことやとても幸せなこと」を話している時に、
突然そのような状態になるクライアントさんもいます。
「幸せな話をしている」のに、突然解離して何も感じなくなってしまうのです。

それは私にとって、戸惑うことでした。

でも今回新しい情報から、その理由がわかりました。

それは単純なことではなく、脳の発達段階や身体的システムの理解、
神経生理学や愛着心理、防衛機制など私たちに起こる様々な反応に関する理解が必要です。

話を一度聞いただけ、本を一回読んだだけ、では簡単に理解することは難しいです。
同じ本を何度も読み込み、別の見地から書いてある本を読み、
そこと照らし合わせながら探っていって、それでもよくわからなくて、
それでもあきらめずに格闘していって初めて理解できることもあります。

普通なら投げ出してしまいそうな「わからないこと」と格闘して
「何とかして、わかりたい!」と前に進むエネルギーの元は、
やはりクライアントさんたちの存在です。
その人たちに「今よりもっと良い人生を送ってほしい」という強い思いがあるからです。

知識を得て理解が進むことは、非常に大きな価値があると感じています。

クライアントさんに起きる「(私が)不可解と感じること」、
それが起こるメカニズムや背景がわかると、
ここまで生きてきたクライアントさんの過去を、より理解することができ、
これまで以上にクライアントさんに寄り添うことができます。

「自分に起きたと認めるには苦しすぎる経験」は
時にクライアントさんの記憶から「除外」され、
思い出されることも言葉になることもありません。

今回得た新しい知識によって、そんな「言葉にならない背景」を
クライアントさんの様子から理解する能力は少し高まったと思います。

クライアントさんのこれまでの人生を、より理解し、
痛みを癒し、可能性のある未来へと背中を優しく押していく。

それが少しでもできるのは、私がセラピーとコーチングと両方ができるからだと思います。

人は誰でも傷を持っているし、可能性も大きく持っています。

その傷があまりにも大きくて生きづらさを抱えているなら、
セラピーで痛みを癒していきます。

苦しかったこれまでとは違う状況にまで回復してきたら、
今度はコーチングでその人の素晴らしい人生を応援していく。

セッションを通して、そんな関わりができることは私の大きな喜びです。

もっともっとクライアントさんに寄り添える存在になり、
その可能性を開いていける存在になりたいと願っています。

せっかく生まれてきて、そしてここまで生きてきたのですから、
これまで以上に良い人生を歩んでいってほしいと願っています。