白鳥たち

掲載日:2021.03.02


私のセッションは、
親に否定され続け心に傷を負い、生きづらさを抱えている人や、
親に人生を支配されて苦しむ人たちが
自分自身の人生を生きていくことをサポートすることが多いです。

しかし、それ以外の課題でのセッションももちろんあります。

その一つは、職場において誠実で質の良い仕事をしようとしている人たちのためのセッションです。

医療、福祉、教育などの現場を始め、役所や一般企業においても、
長年続いた慣行があり、それが必ずしも利用者や対象者のためにはならないことがよくあります。

それらの慣行は、もしかすると、元々は組織として効率的で良い仕事をすることに
つながっていたことかもしれません。

しかし、長年見直されることもなく、いつの間にか利用者対象者のため
(学校であれば生徒、病院であれば患者、児相であれば子どもたち)よりも
組織の都合やパワーゲームに重きが置かれている職場も少なくありません。

権力者に気に入られ昇進することにしか興味がない上司、
部下に嫌われたくないという気持ちが強く、必要な指導さえ行えない上司、
権力を握ることにのみエネルギーを注いでいる上司、
すべて無難にやり過ごしたいがために何も行動しない上司、
そして似たような同僚たち。

そのような中で、本気で利用者や対象者のことを考えたり
本来の目的に添った仕事をしようと奮闘する誠実な人たちは、
仕事の目的よりも自分たちが楽をしたり優位に立つことを優先する人たちや、
自分で考えることを放棄した「変化を嫌う人たち」の中で、苦しみます。

職場の中には、組織の在り方や仕事の優先事項などに
当初は疑問を感じていた人もいたようですが、
多勢に無勢の中で、多くの人たちは志を曲げていくようです。

そうして多くの人たちがただ漫然と無難な仕事をしている中で、
誠実に本来の目的に添った仕事をしていこうとする人たちは、
「組織の規律を乱すメンドウな人」として見られ、
時に「変人扱い」され、時にいじめられることもあります。

そのような孤立無援の中で、
彼らは徐々に「自分がおかしいのかもしれない」と思い込まされていき、
自己否定に陥り、人によっては志を手放し組織に妥協していき、
人によっては心を病んでいきます。

私が今のような仕事をしようと思ったきっかけの一つが、
「質の良い仕事を誠実にしていた人たち
(例えば保育士や看護師、教員、役所の職員、NPOのスタッフなど)が
心や体を壊して辞めていく現実」を目の当たりにしたことでした。

「そのような人たちが壊れずに、良い仕事を続けていけるように支えたい」と強く思いました。

今、私のクライアントさんの中には、そのように誠実に仕事をしていこうとしている人たちがいます。
彼女たちを「あなたは間違っていない」と支え励ましていくことも私の大事な仕事です。
励ますだけではなく、いかに彼らが壊れずに仕事をしていけるかを
一緒に知恵を絞っていくことも私の仕事だと感じています。

彼女たちの話を聞いていると、
「こういう人たちがこの社会をかろうじて支えているんだな」と感じます。

職場の中で「お前がおかしい」と言われ続けてきた人たち。
自分たちと同じになることを強いられてきた人たち。

「アヒルの社会」に違和感を覚え、組織になじめず「異端児」として扱われ、
苦しく辛い思いをしてきた「みにくいアヒルの子たち」。

でも、そんな「アヒルの社会」で異端児として苦しんでいた彼女たちは、
自分は実は「白鳥」だということに気づいていくことで、
「白鳥として生きる誇り」を取り戻していきます。

彼女たちを支えていくことが、まっとうな社会をなんとか保っていくことになる。
私は、そう強く感じます。

孤軍奮闘をしている「白鳥たち」を愛おしく感じながら、
私は「彼女たちの誇りと歩み」を支えていきます。

それが私の「誇りと喜び」でもあります。