1歳の誕生会

掲載日:2020.09.15


仙台に、血のつながらない娘と孫がいます。
娘のMさんは、母親との関係で苦しんでいた元クライアントさん。
3年前にご縁が繋がり、1年ほどセッションを続けました。

当時の彼女は、結婚して10年になる夫もいて正社員として仕事もしていました。
しかし、結婚してからも、彼女の生活は「お母さん」中心に動いていました。
お母さんから呼び出しがあると、何をおいても駆けつけ、お母さんの指示に従います。
夫と二人で旅行なんてもってのほか。

夫と結婚をする時には、お母さんから「あんただけ幸せになって!」
「裏切者!」と非難されたそうです。

週末は実家に行き、お母さんのためにあれこれとする。
それでも気に入らないと、お母さんに罵倒され非難され、泣きながら帰ってくる。
どんなに激しくお母さんに感情をぶつけられても耐える生活を続けてきました。

そんな日々を延々と続けてきたある日、いつものようにお母さんから激しく罵倒され、
とうとう彼女はそのような状況に耐え切れなくなりました。
その直後に、Mさんは私のことを見つけコンタクトを取ってくれました。

彼女が「こんな生活はもうイヤ」と思ったのは当たり前のことです。
セッションは、「お母さんと距離を取ること」から始まりました。

今まで「お母さん中心」に生きてきた彼女にとって、それはとても難しいことでした。
私のアドバイスに従い距離を置こうとする彼女に対し、
お母さんからは怒りのメールが次々と届きます。
彼女はおびえ切ってパニックになったりフリーズしてしまいそうな状態でした。

詳細は省きますが、そこから1年のセッションを経て、Mさんはお母さんから自立しました。
そして、Mさんのお母さんも、徐々にそのことを受け入れていきました

Mさんが夫との生活を大事にできるようになり、気持ちが安定してきた時、
私は「赤ちゃんができるような気がするよ」と言ったことを覚えています。
それから半年ほどして、Mさんは妊娠しました。
Mさんと夫はもちろん、双方の親たちも、彼女の妊娠をとても喜びました。

去年の夏、学会で仙台に行った時に、私は初めてMさんに会いました。
ずっと電話でのセッションだったので、ナマのMさんと会うのは初めてでした。
待ち合わせの場所に現れたMさんは、色白のまさに「東北美人」でした。

かなり大きくなったお腹のMさんと夕食を共にし、近況を聞かせてもらいました。
子どもが産まれてくることを心待ちにしているMさんの言葉やしぐさから、
今の彼女の心の安定と幸せが十分に伝わってきました。

そして、去年の9月にMさんは男の子を出産しました。
生まれたばかりのHくんの写真を送ってくれたのを始めに、
数か月おきに成長していくHくんの写真が添付で送られてきます。

「寝返りを打った」「立った」「歩くようになった」という報告に、
「北海道のばあば」としては、「初孫」の成長に目を細めています。

東京に住む今のところ結婚の気配が全くない血の繋がっている私の娘にも、
Hくんのことを「地球で一番可愛い赤ちゃんなんだよ」と自慢して、
「何バカなの!?」と笑われています。

そんな「Hくんの1歳の誕生日をお祝いしよう!」と私から提案して、
先日zoomでMさんと「誕生お祝い会」と称して「おしゃべり会」をしました。

ナマで動くHくんを見られて、人生で2度目のMさんの顔を見ながらのおしゃべりです。
去年の夏に会った時より顔がシャープになっていたので確認すると、
「出産後5キロ痩せた」ということでした。

詳しい事情は知りませんが、コロナの環境の中でどうしても「一人で」になりがちな
子育て環境も、Mさんが痩せた(やつれた?)一つの要因かもしれません。
痩せたことの良し悪しはわかりませんが、美人度は更に増していました。

育つ過程で色々な苦労をされたMさんですが、
Hくんを育てるにあたっては自分がされて辛かったことはせず、
彼が持って生まれたものを傷つけたり損なったりしないように育てていることが、
すでに個性の片鱗が感じられるHくんの表情やしぐさから伝わってきました。

Mさんはここまで本当によく頑張ってきたし、今も頑張っていることがよくわかります。
「Hが可愛くてたまらない」「今はとても幸せ」というMさん。
Mさんも夫も双方の親も、Hくんを囲んで全員が幸せです。
今のこの幸せは、Mさんが自分で努力をしてつかんだ幸せです。

「適切な境界線」が引けたとき、それぞれがしっかりと自立できた時、
人は幸せな関係が作れることをMさんは改めて私に教えてくれています。

Mさんのお母さんも、今では自分で自分の幸せを見つけたようです。
「お母さん、やればできるじゃん!」と思います。

でも、Mさんのお母さんのように娘に距離を置かれたことによって
娘を罵倒したり支配しようとしていたことを反省し修正できる人はまれです。
Mさんのお母さんもよく頑張ってくれたと思います。
だからこそ、今Mさんからこんなに幸せな時間をもらえているのだと思います。

Zoomでの「お誕生会」の背景の壁は、お誕生日用にデコレーションされていました。
それが決して派手ではなくてセンスが良くて、とってもステキでした。

1年半の産休育休が取れるちゃんとした会社に勤めるMさんですが、
そのセンスを発揮したお仕事もできるだろうと思うようなステキなデコレーションでした。

しかも、会話の中でMさんからキラキラした表情で
「私、やってみたいことがあるんです」という言葉が発せられました。

セッションをしていた頃には、「やってみたいこと」や「好きなこと」を聞かれても、
なかなか出てこないMさんでした。
ずっと「お母さんがどう思うか」にしか気持ちを向けていなかったので、
「自分は何が好きか」「どうしたいか」という問いには戸惑いが大きかったMさんです。

そのMさんから「やってみたいことがある」という言葉が聞けたことは、
それだけで私は嬉しく感じました。
Mさんは今、しっかりと「自分」を生きているんだなと思いました。

Mさんの「やってみたいこと」は、とてもMさんに合っていると思います。
Mさんなら、きっとその道でも彼女ならではのステキさを発揮していくと思いました。

私たちがzoomでおしゃべりをした翌日が、Hくんのお誕生日でした。
その時の写真も翌日に送られてきました。

「下手っぴですが、H用のケーキも作ってみました」というそのケーキも、
Mさんが本当にHくんのことを心から愛していることが伝わってくるケーキでした。

Mさんの苦しみの下には、こんなに愛情深くステキな輝きが隠れていたのだと、
しみじみと感じました。

Mさん家族の幸せそうな写真を見ていると、私まで幸せになります。
なぜか涙まで出てきてしまいました。

Mさんの様子を通して、私は改めて、
もっと多くの人たちが「不必要な苦しみ」から解放されて、
その人「本来のステキさを発揮して生きて」いってほしいと、
より強く思うようになりました。

「適切な境界線」を引いて、まずは「自分であること」を大切にする。
そして、これまで受けてきた「心の傷のケア」をしていく。

これらをやっていった時、その先にあるのは「その人本来の輝きに満ちた幸せ」なのだと
Mさんを通して私は実感しています。

Mさんの人生にはいろいろな苦労や困難がありました。
セッションが終了した後にも、Mさんには苦労や悲しみが続きました。

1人では抱えきれなくなった時には「紀代子さん、セッションをお願いします」と連絡してきて、
Mさんは単発セッションで心を整理して、そこから一つ一つの困難を乗り越えていきました。

ここまでたくさんの困難な道を歩んでそれを乗り越えてきたMさんには、
この先の人生はこれまでの分もずっと幸せが続いてほしいと願っています。

誰に「何バカ」と言われようと、
私はこれからも、可愛い娘と孫の幸せが続くことを祈っています。