知識は助けにもなるし、妨げにもなる

掲載日:2022.10.11


セッションを通じていろいろな人と出会います。
1度だけや2~3回のご縁の人もいますが、1年以上継続する人も多くいます。

私に繋がる人は大きく分けて、
目の前にある悩みを解決したくて「話を聞いてもらいたい=カウンセリング」を希望する人、
理由はわからないけれど「人間関係がうまくいかない」とか「生きづらさを感じている」という人、
「やりたいことや叶えたいことがあってその実現のためのサポート=コーチング」を希望する人
などがいます。

中にはご自身の課題はほぼ解決した後も、「心のお掃除」として
2週間に1回のセッションを10年以上受け続けている人たちもいます。
そういう人たちは、悩みがあるというよりは
「日常をより快適に過ごすために」セッションを利用していると言えます。

目の前にある単発的な課題や悩みを聞いてもらうカウンセリングを受ける人は
「聞いてもらってすっきりした」「心の整理がついた」ということで
1回や数回で終了します。

コーチングを希望する人は、そのテーマの大きさや自身が抱えている心の障壁によって
短期間の人もいれば長期間を要する人もいます。

コーチングを希望する多くの人は、「自分は心は健康だからコーチングを受ける」と思っています。
しかし、よくよく話を聞いていくと「自分でも気づいていなかった心の深いところに傷を抱えていて、
それがやりたいことにブレーキをかけている」ということが判明することもよくあります。

そのように「心の深いところに傷を抱えている」と判明した人たちや
「人間関係がうまくいかない」とか「生きづらさを感じている」という人たちには、
セラピーが必要となります。

「カウンセリング」と「セラピー」は何が違うのか。
きっといろいろな定義の仕方があるのだと思います。

ここでそれに関して書き始めるとかなり長くなってしまいますし、
本題から少しずれるので今日のところは割愛します。

「セッションを受けてみよう」と私と繋がった動機はいろいろありますが
少しずつであっても確実に変化をしていく人と、
残念ながら希望する変化が難しい人に分かれます。

今日はそのあたりについて少し触れてみたいと思います。

クライアントさんの中にはネットや本で勉強して
「心」や「脳」についてかなり知識が豊富な方たちがいます。

セッションを通じて感じることは、
そのような「知識の豊富な人ほど変化が難しい」ということです。
すべての人ではありませんが、その傾向が強いと感じます。

今日は、その変化を得るためのヒントを
ざっくりと「脳の構造の側面」からお伝えしてみようと思います。

人間の脳は、大きく分けて3層の構造に分けられます。

1つ目は、生物として進化の過程で一番最初にできた脳=脳幹。
ここは生物としての生き残りをかけた体の反応や自律神経を司る部分です。
2つ目は、情動を司る大脳辺縁系。
3つ目は、理性的に思考する大脳新皮質です。

すべてのクライアントさんにこのことを説明しているわけではなく、
と言うか、むしろ多くのクライアントさんには説明していません。

最初は話を聞かせてもらいますが、徐々に私の提案する方法をやってもらいます。
これまで経験したことがない方法なので、最初はとまどうこともありますが、
少しずつ試してもらいます。
「やったことはないけれど、ひとまずやってみよう」と一歩踏み出してもらいます。

すると、「何だかわからないけれど何かが変化した感覚」を得ることが多いです。
これが「大脳新皮質で理解できる」を超えた変化です。

「言語化できない大脳辺縁系や脳幹」にアクセスすることによって
言葉にできないけれど何か大事な変化が起きたことを感じるということです。

しかし、1回や数回のセッションで「すぐ結果が欲しい」という人は、
(もちろん誰でも早く結果が欲しいと思いますが)
その「やったことはないが、とりあえずやってみる」ということに抵抗を示すことが多く、
「そんなことに意味を感じない」「そんなことに使う時間はもったいない」と
一歩踏み出そうとしてくれない人が多いように感じます

その結果「こんなやり方は自分には意味があるとは思えない」
とセッションを一度か数回でやめてしまいます。

思考する頭を持った人間なので、「納得してから前に進みたい」という気持ちを持つことは
当然と言えば当然だと私も思います。

しかし、コーチングやカウンセリング、セラピーなど「心」に関する事柄においては
「知識・思考=大脳新皮質」だけでは望む結果を得るには不十分なのです。

自分なりにたくさん心理学や脳や身体に関する本を読み勉強してきて知識も豊富にある。
そういう人ほど、「頭で理解したい」ワナにはまっていて、
「頭での理解」の先に進むことができない人が多いと
色々な人たちとセッションをしていて最近特に感じます。

望む変化を得るために必要なことは、
「知識が豊富にあるかないか」ではなく、
「やったことがなく少し不安を感じても、とりあえずやってみよう」
と一歩を踏み出せるかどうかなのだとつくづく思います。

こう書いてみて、何だか怪しい宗教団体や詐欺師みたいで、
躊躇する人に「絶対に幸せになります」とか「儲かります」から
「とにかくやってみましょうよ」というやり方と同じ感じがしますね。

それでも、希望する変化を求めるのであれば、
「心が柔軟である」ことが必須だと痛感しています。

「やったことがないことでも、とりあえずやってみる」
その大前提として、それを提案している人間が信頼できる人かどうかということがありますが。

この判断は、なかなか難しいかもしれません。
とりあえずセラピストとかコーチという肩書で一定程度の仕事をしてきている人には
いったんは信頼を置いてやってみていいのではと思います。

とは言え、コーチやカウンセラー、セラピストでも
その知識や技術を悪用する人もいないことはないので、
その点も頭の隅に置きながら、としか言えないなぁと私も歯切れが悪くなりますが。

私のこれまでの経験から言えることは、
「頭が良い悪い」とか「知識が豊富にあるかないか」は、
その人が望む変化を起こすにはあまり関係が無いということ。
むしろ知識がある分、理屈で理解できないことに抵抗を示し、うまく進めないことが多いということ。

柔軟な心というか対応力がある人は、抱えている課題がどれほど大きくても
徐々にそして確実にご本人が望む変化をしていくものだなと感じる日々です。

そして、その心の柔軟さを取り戻していってもらうことも
セラピストとしての力量なのだと自分を鼓舞する日々でもあります。